ハイカットフィルターで、できればfdのすぐ上の領域からばっさりカットしたいところですが、カットオフ100Hz、-12dB/octでも必要なインダクタンスは12mH、コンデンサは370μFになります。これ以上なるべくお金をかけたくないので、廃止した2ウェイネットワーク(写真)の空芯コイルを流用したいところですが、3個直列にしてもインダクタンスは全く足りません。


ここで、自作スピーカーをパソコンで簡易に測定する方法を知ったので、一度、BHやASWを測定してみることにしました。特性を知ってから対策を立てたいと思います。
スピーカーの測定に使用したのはWaveGeneWaveSpectraというソフト。WaveGeneで生成した20Hz〜20kHzのスイープ信号を再生し、測定用マイク(写真)で拾った音をWaveSpectraのピークホールド機能を利用してグラフ化します。 スイープ信号は44.1kHzのWAVEファイルとしてCD-Rにコピーし、それをCDプレーヤーで再生する方法でテストしました。
マイクはケーズデンキで853円でした。価格は安いですが、周波数特性は測定範囲を一応カバーしています。全域にわたってフラットな特性かどうか分かりませんが、感度も良く、これで十分役に立ちました。
測定は全てリスニングポジションで行い、音量も普段聴いているレベルで行いました。
右chのASWのみを接続し測定したのが上図。30Hzあたりをピークにかなりの音圧が出ていますが、同時に200Hzにそれと同じくらいの音圧でピークが発生しています。ASW内部の定在波のせいでしょうか?またはランバーコアの箱鳴りのせいでしょうか?音はダクトから漏れてくるので箱が鳴っているという感じではないのですが・・・いずれにしてもこれはかなり耳障りです。ダクトからではなく板を通して漏れてくる音も少し聞こえますが、音が小さいので実際の使用ではメインスピーカーの音に消されてしまいます。ランバーコアでも遮音効果は問題なしです。
次にBHを単体で測定してみました。図の上段がツイータ無し、下段がツイータ(T90A)ありです。T90Aは高能率ですが、アッテネータを使わず0.33μFのフィルムコンを介して接続しています。安物のマイク+パソコンでの測定ですが、T90Aの有無による超高域レベルの違いがグラフに現れています。また、低域から中域にかけて上下のグラフがほぼ同じ波形をプロットしているところは、この音域での測定結果の信頼性を高めています。また、聴感上の音圧ともぴったり一致しています。グラフを見ると低域は42Hzまで伸びており、そこからは急降下しているのが分かります。また、低音の量感に影響する50〜80Hzあたりのレベルが少し落ち込んでいるのが気になります。試しにユニット前面50cmにマイクを置いて計測してみました。結果は下図の通り落ち込みはなく、リスニングルームの音響特性に起因するものでした。
さて、ASWのハイカットフィルターですが、必要なインダクタンスが12mHにもなると、空芯コイルで組むのは現実的ではありません。1.2mHのコイルの直流抵抗が仮に0.3Ωとしても10個直列につなげれば3Ωにもなります。よくコアコイルは音が悪いと言われますが、それはもう少し高い周波数で使用したときの話。カットオフが100Hzなどというフィルターでは空芯にこだわる必要はありません。しかし、コアコイルを新たに購入すると結構な値段がするので、当面の対処として手持ちの空芯コイルにコアを入れてインダクタンスを上げる作戦を思いつきました。コアの材料はホームセンターにあった22mm径と16mm径のユニクロねじと座金。手持ちの空芯コイルのコア径に合わせて使い分けます。コアコイルは磁気飽和が起きるのでダメという話も良く聞きますが、それはサイズの小さいコアに全ての磁力線が通った時の話。空芯コイルに後からネジを入れてもコアに隙間が出来るのでよほどの大電流でないと磁気飽和など起きませんが、その隙間のせいでインダクタンスの上昇効果も思ったほどではないかも知れません。
コアを入れるのは良いのですが、インダクタンスがどのくらい上昇するのか測定したいところです。インダクタンスの測定方法についてネットで調べたところ、NOT回路を用いたLC発振回路の発振周波数からインダクタンスを求める方法が紹介されていました。回路も簡単そうだし周波数を計測できるテスターも持っているので、これでやってみようと思いました。
NOT回路のロジックICは秋月八潮店で購入。この店ではハイカットフィルターに使う無極性電解コンデンサも購入しました。ICは74HC04が置いてなかったので74HC540というICで代用しました。他のパーツは自宅にあるもので済みました。なお、回路図のR1は1.6MΩ、R2は20KΩの可変抵抗に置き換わっています。最初R2を固定にしたのですが、インダクタによっては発振が安定しない場合があったので、R2で調整するようにしました。
作成した回路で手持ちのコイルを測ってみます。最初はSIDEWINDERというメーカーの0.5mH空芯コイルです。32.94KHzで発振が安定しました。インダクタンスは以下の式で求められます。計算すると約0.47mHですのでほぼ合っています。

  L=1÷(4×π×π×C×F×F)
  
   L=インダクタンス(H)
   C=静電容量(F)
   F=周波数(Hz)
   π=3.14

上記のうちCは0.05μF固定です。電卓で計算する場合、静電容量と周波数の桁数が足りなくなるので、ゼロ6個分相殺して、単位をμFとKHzとして計算します。
次にトリテックの1.2mHを測ってみます。21.06KHzで安定しましたので、計算すると約1.14mHでした。
次がヤフオクで落札した中古1.5mHです。計算すると約0.9mHしかありませんでした。やられました・・・(>_<) トリテックの1.2mHと銅線の太さが同じなのに、サイズが小さい。それで1.5mHとは変だとは思っていたのですが・・・1.5などとそれらしく押印してありますがカモフラージュでした。普通インダクタンスなど測れないだろうと高を括っていたのでしょう。2年前の落札を今さら評価は変えられないので泣き寝入りですが、怪しげな古物商には要注意です。(`ヘ´) 以前の2ウェイのツイータのクロスオーバーが設計よりも高い方にずれていたことになります。(^^;)
コアにボルトを通すとインダクタンスは3倍以上になりました。3個直列でも目標の12mHは難しそうですが、コア入りだと簡単にインダクタンスを稼げます。
全てのコイルにコアを入れて板に配置し、コンデンサも330μF+100μFを接続して、自作ハイカットフィルターの完成です。
合成インダクタンスは9.2mHくらいになりました。カットオフ周波数は100Hzより若干上がるかもしれませんが、200Hzのピークが下がればいいのです。
作成したハイカットフィルターを入れて計測したのが上図。30Hzの音圧は変わらず、それより上のレベルが落ちているのが分かります。200Hzのピークはありますがレベルがかなり下がっています。
BHをつないで測定してみました。42Hzから降下しているBHの低域をピンポイントで補完しているのが分かります。音圧も十分です。音楽を聴いてみると、BH単体では苦しかったパイプオルガンでは教会やコンサートホールの雰囲気が味わえますし、ロックやポップス系では特にバスドラムの一打一打の重量感が増しました。しかも切れが良く、BHの切れの良い低音にかぶることがありません。ウーファーを電気的に増幅して大振幅でドライブする市販サブウーファーでは、この立ち上がり、立ち下がりの良さは出ないでしょう。ASWの200Hzのピークは全く気になりません。というかASWから音が出ているという感覚がなく、超低域まで再生するバックロードホーンを聴いている感じです。BHとの相性は抜群です。楽器の基音が明瞭になった効果か、低音楽器だけではなく演奏全体がよりリアルに感じられるようになりました。板材のランバーコアは結果的には問題なく使用できています。今後の課題としては、ハイカットフィルターのグレードアップでしょうか。専用のコアコイルに比べると効率が悪いし、直流抵抗も0.9Ωほどあります。直流抵抗が減れば、さらに音圧やスピード感が改善されるはずです。手巻きコイル自作も視野に入れて、いじっていくつもりです。(*^_^*)
自作サブウーファー(ASW)   測定、チューニング編

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