2013/2/10 完成
ASWは、ケルトン方式、チューニングダクト方式とも呼ばれますが、簡単に言えばバスレフのダクトから出る低音のみを利用する方式です。密閉箱とバスレフ箱がくっついたような構造で、ダクトの共振周波数(fd)を低くとることで超低音を再生します(左図)。単に低音を補完するならばASWではなく市販のサブウーファーを追加すれば良いことですが、クロスオーバーを最低にしてもBHの低音とかぶってしまい、音離れの良いBHにした意味がなくなってしまいます。BHでも40Hz付近までは再生するので、それ以下の領域をピンポイントで補完するのはASWが最適です。

ダクトをダブルバスレフのように2段にして帯域を広げたDRWという方式もありますが、大型になるという欠点があります。センターウーファーではなく、左右に1本ずつ置くつもりなので、DRWにしなくても帯域を広げる方法として、左右のfdをずらすスタガー方式という手もあります。音域が左右非対称というのは何となく抵抗がありますが、超低域なので左右のfdが少しずれていてもおそらく分からないし、音像や定位に影響する帯域ではないので、この方式でやってみようと思いました。
ドライバとして使うユニットはFW168Nと決まっていますが、問題は音量です。ユニットの出力音圧レベルが中音域で89dBの16cmユニットを、ユニットのf0以下のfdで出せる音量がどの程度なのか未知数ですし、同90dBのFE108EΣと音量バランスがとれるのか気になるところです。ネットでASW、DRW関連の記事を調査しましたが、作成例が少なく、音圧レベルに関して参考になるものはありませんでした。せっかく作ったのにFW168N1本では音量不足でしたというのはイヤなので、確実な方法として、思い切ってFW168Nをもう1本ずつ追加し、片ch2発でいくことにしました。少し出費がかさみますが、手持ちのFW168Nも有効利用できます。2発にする場合、互いのユニットの振動板を向かい合わせて逆相接続とし、駆動力を2倍にする方法もありますが、箱を大きくとって振動板の面積を2倍にした方が効果がありそうな気がしたので、2個並列としました。
今回の設計でもエンクロージャー設計支援ソフト「sped」が役立ちました。4次バンドパスを選択すればASWの設計ができます。6次バンドパスでプッシュプルウーファーの設計もできるようです。エンクロージャーのサイズを決めるには、材料の板にムダが出ないように試行錯誤の繰り返しですが、本ソフトはパラメータを変えるだけで第1、第2キャビネットのサイズや容積、fd等を計算してくれるので、とても助かりました。

容積は第1キャビ約70L、第2キャビ約30L。ダクトの面積はユニットの実効振動板面積の50%にしました。fdは28Hzと34Hzに設定しました。
spedで得られた寸法を設計図と板取図に反映させます。板材はホームセンターに置いてあった1220mm×2440mmという21mm厚の大きなランバーコア1枚と、サブロクの21mm厚ランバーコア1枚です。図面を見せてカットもやってもらいました。
実はランバーコアのことを良く知らずに値段が手頃なので決めてしまったのですが、組み立ての段階で初めて知りました。ランバーコアってとても軽いっす(-_-;)。ラワンランバーとラワン合板の違いは、中身が薄い板か角材かの違いだと思っていたのですが、ランバーの方は中の集成材が軽いようです。同じ大きさならば15mm厚MDFの方が重いです。まあ、21mm厚だし、十分補強すれば大丈夫だろうと、作業を強行します(^^;)。
補強板を多めに接着していきます。
第2キャビネットにはポリエステル綿が詰まった敷き布団を切り取って吸音材として詰め込みます。バッフルをくり抜いた板も補強材として張り付けました。こちらのfdは28Hzなのでダクト長は65cmくらい必要です。
第2キャビは木工ボンドで密閉します。第1キャビは後でユニットのメンテナンスや吸音材のチューニングが行えるように、すきまテープを貼り付けてからネジ止めとしました。
こちらのダクト長は35cm、fdは34Hzです。どちらも第1キャビには吸音材は入れないで試してみます。
インパクトドライバでコーススレッドを打ち込んでいきます。木が柔らかいので案内穴なしでずぶずぶ入っていきます(^^;)。ねじ止めされた隙間テープは圧縮され、板もしっかり固定されます。
ひとまず完成です。アンプとの接続はA、B2系統あるスピーカー端子のAがメインのBH、BがASWです。ASWのインピーダンスはFW168Nのパラレル接続で4Ω。アンプの取説ではA+Bの場合それぞれ8Ω以上と書かれていますが、よほどの大音量を出さなければ大丈夫そうです。かなり音量を上げてもアンプの保護回路が働くことはありませんでした。さて、気になるASWの音ですが、第1キャビの吸音材無しではダクトから漏れてくる中高音がかなり耳障りです。一方低域の方は特にバスドラムや銅鑼のような打楽器の一打に重みが感じられるようになり、パイプオルガンの空気が震えるような超低音も体感できるようになりました。実際にASWがどの帯域で働いているのか確かめるためにWaveGeneというソフトで20Hzから40Hzまで2Hz刻みで正弦波を生成して試聴してみました。それで分かったことは実際のfdが設計値より2Hzくらい低い方にずれていることと、fd±2Hzくらいは十分な音量が出ていることです。それにしても30Hz以下の音?は聴いていてあまり気持ちの良いものではありません。圧迫感があり、音を止めるとほっとします。また、ボリュームを上げると部屋のあちこちが振動します。
手持ちのソースをしばらく聴いているうちに、28Hz(実際には26Hz)というfdが低すぎるのではないかと思えてきました。試しにこのASWのみを試聴して、fdが効いているなと思えるのはパイプオルガンくらいで、他の曲では中高音の音漏ればかり聞こえてきます。(-_-;)
中高音の音漏れ対策として、一旦蓋を開けて、向かい合う面の片側だけにポリエステル綿を貼り付けました。また、レンジが広くても低すぎるfdはムダと思い、思い切ってダクトを短く切断してしまいました(写真左)。(^^;) fdはもう片方と同じ32Hzあたり設定しました。再びfdを下げたくなったら、ダクトに板を差し込めば対応できます。対策の結果、中高音の漏れはかなり減りました。しかし、中低域のピーク性のホーホー音が依然としてダクトから漏れてきます。(-_-;) 
残りの対策としてはハイカットフィルターを入れるしかありません。キャビネットとしては完成したので、余っていたオークのツキ板を前面と、上板に張り、見た目をきれいにしました。
自作サブウーファー(ASW)
メインスピーカーをバックロードホーン(以下BH)にしたので、使わなくなったFW168NでASW(アコースティックスーパーウーファー)を作ってみました。BHの低音再生限界以下を補完するのがねらいです。
チューニング編に進む

斎藤家のホームページ