2016/9/22 完成
自作レコードプレーヤー
自宅のレコードプレーヤーのキャビネットを天然木1枚板にリフォームしてみました。

今までのレコードプレーヤーは学生の頃、オーディオ日曜大工(長岡鉄男著)という本に載っていた作成例を参考に、21ミリ厚のラワン合板を4枚重ねて作ったものですが、長い年月により全体的に汚れが目立ち、よく見るとトーンアームにもサビが出る始末。この際トーンアームやターンテーブルのクリーニングと同時にキャビネットの作り替えをすることにしました。
キャビネットを作ろうと思った時から決めていたことは、天然木の一枚板で作ること。でも、一枚板でキャビネットを作るとなると、最低フォノモーターやトーンアームを設置できる幅や長さが必要で、板も厚いほど良いのですが、大きい板はその分高価です。希少な木になるととても高価なので、比較的安価な欅やタモ、楢などを狙ってヤフオクを調査。ちょうど良い大きさの楠の一枚板を見つけ、3000円で落札。大きさは幅44cm、長さ65cm、厚さ6cmで、キャビネットを作るには十分な大きさです。木の端に少しひび割れがあったので(写真右端)、その部分を丸鋸でカットました。商品が届いてから気づいたのですが、楠という木は樟脳の原料だそうで、板を置いておくだけで樟脳の香りが部屋中に漂います。とくに加工時はとても良い香りがします。この香りがダメな人もいるかも知れませんが、私は好きです。仏像も楠を彫るそうで、お寺の本堂にいるような、心が落ち着く香りです。
フォノモーターの取り付け位置は、板の大きさやトーンアームの配置とのバランスを考えて適当に決めます。トーンアームの取り付け位置(正面から見て時計の何時の位置に取り付けるか)は、トーンアームの操作性や見た目のバランスで決めれば良いのですが、ターンテーブルの中心からトーンアームの取り付け穴中心までの距離は、トーンアームの機種により決まっています。トーンアームはSAECのWE-308。取扱説明書はとうに紛失しているので困りましたが、Vinyl Engineというサイトからダウンロードして知ることができました。位置が決まったら、ドリルとジグソーを使ってそれぞれの取り付け穴を空けていきます。写真は穴空け後、ペーパーがけ、ニス塗りが終わったところ。
フォノモーターはビクターのTT-71。TT-71本体は3本の木ねじで取り付けます。WE-308のアームベースは裏側から大きなナットで固定しますが、板が厚すぎて届かず、裏側に深さ3cmほどザクリを入れてから締めつけます。
TT-71は40年位前の製品ですが、故障することもなくしっかり動いています。当時単体で購入できるフォノモーターとしては最もCPの高い製品でした。ビクターのロゴは昔のタイプです。昔の話をすると、学生の頃初めて買ったプレーヤーはCECというメーカーのベルトドライブで、機種は忘れましたがたしか1万円台で購入した覚えがあります。当時FMfanという雑誌の「体験的製品ガイド」(後に「長岡鉄男のダイナミックテスト」に名称変更)というコーナーで、長岡氏がCPの高いレコードプレーヤーとして紹介されていました。TT-71やWE-308もそのコーナーで知ったのだと思います。私のオーディオ遍歴において、このコーナーの影響は大きく、アンプのパイオニアSA-8800、チューナー同TX-8800購入に至ったのも記事のおかげです。まあ、パイオニアの8800シリーズは当時抜群のルックスだったので、記事を読まなくても選択したと思います。
WE-308も、全くメンテナンスせずにいたのですが、埃や汚れだけでなく、よく見るとサビも少し付着していました。主要な部品は全て分解、清掃し、金属クリーナーで磨いたら元通りピカピカになりました。そして分解したときに初めてダブルナイフエッジの構造を理解することができました。今までは、上向きと下向き2本のエッジをはさんで、なぜトーンアームが動くのか理解できなかったのですが、今回その精密な構造に感心しました。清掃、組み立て後も相変わらず超高感度でガタも全くありません。
オーディオテクニカのマグネシウム合金ヘッドシェルMG-10とDENONの名機DL-103の組み合わせ。
楠の木目がいい感じで出ています。オーディオ機器は物理的な機能や性能だけではなく、見た目も音質に影響を与える重要な要素ではないでしょうか。
埃よけのアクリルケースはこちらのお店でオーダーしました。自作も考えましたが、綺麗に加工する自信がありませんでした。仕上がりはさすがプロと思わせるもので、満足しています。ハウリング対策ですが、旧プレーヤーで使用していたビクターのHAI-1というインシュレーターを流用するつもりでしたが、釣鐘型ゴムが経年劣化でカチカチになっていたので、とりあえず100均で買った家具の角に付けるウレタンクッションをはさんであります。キャビネットの裏側には2kg位の鉛板を張り付けて自重も重くしてあります。

完成後、さっそく何枚かのレコードを試聴してみました。印象としては以前のプレーヤーとそれほど変わらないのですが、見た目が良くなった分中高音が艶やかになった気がします。重低音の再生は少し弱いのかなとも感じますが、これは以前のプレーヤーでも感じていたことです。自重をもっと重くしたり、インシュレーターを変更したりして、今後試していくつもりです。


2021年11月13日追記
10月上旬、ついにターンテーブルTT-71の調子が悪くなってしまいました。33回転、45回転ともに回転が安定せず、しばらくすると普通のモーターの様に高速回転してしまいます。もう40年以上昔の製品なので、ついに寿命が来たかなと思い諦めかけましたが、買い換えるにしても、今の時代、代わりになる製品が存在しないことに気付きました。修理してくれるところはあるようですが、数万単位の出費がかかりそうです。ネットで調べると、TT-71の高速回転の事例は結構あるようで、DIYで修理されている方も多々いらっしゃるようです。ということで、私もDIYでチャレンジする気になりました。

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